微エロな5題・「動」
01:服の上から体をまさぐる
「そろそろ行くぜ」
道端に茂る大樹の下で小休止していた一行は、犬夜叉の声で顔を上げた。
皆、飲み物などを片付けて、出発の用意を始める。
この道を通りがかった人に話を聞いたところ、もう少し先に小さな村があるそうだ。
今日は、そこで宿を借りようということで、皆の意見が一致した。
「珊瑚ちゃーん、まだ?」
「ごめん、草鞋の緒がゆるんでるから、締め直してから行く。かごめちゃん、先に行ってて」
「うん、解った」
もう、すでに歩き出している犬夜叉と七宝を追いかけ、かごめも駆けていった。
珊瑚はその場に片膝をつき、草鞋の緒をきゅっと結び直す。
すぐ傍らで、法師と雲母が彼女を待っていた。
「さ、できた」
立ち上がった珊瑚は飛来骨を持ち上げようと身をかがめたが、
「……っ!」
いきなり尻を撫でまわされる感触に、飛来骨を取り落とし、声もなく硬直した。
「法師さまっ!」
後ろにいる弥勒を引っぱたこうと、振り向きかけた珊瑚だが、それより早く、彼のもう片方の腕に抱き込まれ、動きを封じられてしまった。
「ちょ、ちょっと」
戸惑う珊瑚の背後に立つ弥勒の手が、臀部から太腿へと、緩やかに移動する。
尻を撫でられるのはいつものことだが、焦らすように太腿を撫でてくるのは、たいてい、欲しいというサインだ。
「今宵、二人で星を見ましょう」
太腿から腰の辺りまでをまさぐる法師の甘い声が、低く、珊瑚の耳元にささやいた。
「星?」
「二人きりになる口実ですよ」
「……」
いつも弥勒のペースなのは悔しい。
けれど、それだけで、珊瑚は甘くときめいてしまう。
その日、宿を頼んだ民家で仲間たちと夕餉を終えたあと、弥勒と珊瑚は、星を見ると言って外へ出た。
夜空は晴れ、満天の星が輝いていたが、足を止めてゆっくりと空を仰ぐこともなく、二人はしんと静まり返った村の中を歩いた。
村外れには、もう使われていない小屋がある。
その小屋の中に身を滑り込ませると、すぐに弥勒は錫杖を置き、珊瑚を抱き寄せた。
「あ……ちょっ」
珊瑚がわずかに身じろぎしたが、抱き合うのももどかしく、弥勒の手が強引に珊瑚の躰をまさぐる。
「やっ、法師さま」
「だって、おまえに触れたかった」
弥勒は、腕の中に閉じ込めた愛しい娘の背中を撫で、そのまま下へ下へと感触を確かめるように掌を這わせた。
「んっ──」
抵抗するように珊瑚が身をよじると、彼は片手で彼女の腰を強く抱き、もう片方の手で、小袖の上から乳房を掴んだ。
「あっ……!」
休む間もなく躰のあちこちをまさぐられ、珊瑚の呼吸が次第に乱れてくる。
甘い吐息がこぼれる口を、法師の唇がすかさずふさいだ。
奪うような口づけを交わしながら、互いに互いを抱きしめ合う二人は、暗闇にこもり始めた熱に漂い、もつれ合うように均衡を崩した。珊瑚は小屋の壁に背中を押し付けられ、かろうじてそれで身を支えている。
それでも、弥勒は珊瑚の唇を求めることをやめず、小袖の上から肩を撫で、乳房を揉みたて、腰から太腿へと、執拗に手指を這わせた。
衣越しの愛撫がもどかしくなっていった珊瑚は、弥勒にすがりつき、己の舌に絡まる彼の舌を夢中で吸った。
激しく口内を嬲り合う。
ふと、その口づけが途切れ、彼女は苦しげに喘ぎを洩らした。
濡れた唇と乱れた息遣いがひどく悩ましい。
たまらずに、弥勒はねっとりと珊瑚の耳に舌を這わせた。
「あ──!」
「いいですか?」
「……」
法師のささやきに、はっと我に返り、珊瑚は羞恥に身を火照らせた。
「抱きたい。抱いてもいいですか?」
暗闇でもそれと解る、熱を帯びた弥勒の艶冶な視線を受け、娘は思わず眼を逸らした。
頬が熱く、鼓動が速い。
「ここまで来て、訊かないでよ。そんなこと」
「いや、ちょっと性急だったかと。一応、確認を」
法師の声は甘く掠れてはいたが、からかいの響きが含まれている。
「知らない!」
羞恥に耐えきれず、珊瑚が法師に抱きつくと、すぐに口づけが再開され、二人は互いの熱を確かめ合った。
それから、彼が彼女の褶を解き、帯を解き、衣を脱がせ始めるまで、珊瑚には、ひどく長い時間のように感じられた。
どうしようもなく躰が熱いのは、気のせいではないだろう。
〔了〕
2015.8.23.