文章修行家さんに40の短文描写お題
- 01. 告白 |
- 02. 嘘 |
- 03. 卒業 |
- 04. 旅 |
- 05. 学ぶ |
- 06. 電車 |
- 07. ペット |
- 08. 癖 |
- 09. おとな |
- 10. 食事 |
- 11. 本 |
- 12. 夢 |
- 13. 女と女 |
- 14. 手紙 |
- 15. 信仰 |
- 16. 遊び |
- 17. 初体験 |
- 18. 仕事 |
- 19. 化粧 |
- 20. 怒り |
- 21. 神秘 |
- 22. 噂 |
- 23. 彼と彼女 |
- 24. 悲しみ |
- 25. 生 |
- 26. 死 |
- 27. 芝居 |
- 28. 体 |
- 29. 感謝 |
- 30. イベント |
- 31. やわらかさ |
- 32. 痛み |
- 33. 好き |
- 34. 今昔 |
- 35. 渇き |
- 36. 浪漫 |
- 37. 季節 |
- 38. 別れ |
- 39. 欲 |
- 40. 贈り物
00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。
名前は千夜。サイト名は「Fairy Tale」です。
『65文字以内で具体的な場面描写』という難しいお題ですが、頑張ります。
時間軸はばらばらです。
力不足で具体的な場面描写になっていない文章もありますが、よろしくお願いします。
01. 告白 【65文字】
「あのっ、あたしも法師様の子をっ…」
「ん?」
産みたいなんて、自分からは言えない。
何でもない、とぎこちない笑顔で、珊瑚は踵を返した。
02. 嘘 【63文字】
生命に係わる嘘をついた。
闘いが終わって、夫婦になって、愛しい娘は彼にひとつの罰を言い渡す。
「あたしより先に死んだら、許さない」
03. 卒業 【63文字】
珊瑚を護る役目は法師に譲った。
珊瑚との関係を卒業し、これからしばらくは琥珀の相棒になる。
雲母は、琥珀を見上げてみゃあと鳴いた。
04. 旅 【65文字】
本懐を遂げた。
「もう、みんなと旅をすることもないんだね」
「これからは私たち二人の旅路ですよ」
にっこり笑う弥勒に珊瑚は微笑み返した。
05. 学ぶ 【64文字】
法師が頬に紅い手形をつけている。
またか、と犬夜叉はため息をつく。
「おめえもちったあ学習しやがれ」
だが、苦笑する弥勒は嬉しそうだ。
06. 電車 【61文字】
ホームにアナウンスが流れる。
この路線を使うたび、あの受験の日のことを思い出す。
顔を上げ、かごめはいつもの車両に乗り込んだ。
07. ペット 【65文字】
「おすわりの次は、待てかハウス…」
「あ?」
「あっ、別にあんたをそんな目で見てるわけじゃないからっ」
慌てるかごめに犬夜叉は首を捻る。
08. 癖 【64文字】
視線が法衣姿を追っている。
…また。
見えないと落ち着かない。
その姿を探すのが癖になってしまったことに、彼女はまだ気づかないけれど。
09. おとな 【65文字】
月見酒を楽しむ法師と珊瑚を、珊瑚の膝で雲母が見ている。
「大人になったらな」
と弥勒は盃を掲げるが、生きている年数は雲母のほうが長い。
10. 食事 【63文字】
魚は五尾。
「私はいいです」
と一応の遠慮を見せた弥勒だったが、半分食べた珊瑚が残りのそれを差し出すと、実に嬉しそうに受け取った。
11. 本 【62文字】
いつでもどこでも読めるように、かごめは教科書と参考書を持ち歩いている。
けれど、
「なんで本って重いのよ!」
勉強の前に疲労困憊。
12. 夢 【65文字】
風穴に呑まれる父の死。
それに重なる己の死。
そんな夢にはもう慣れた。
残酷なのは、珊瑚との幸せな未来の夢。目覚めて、弥勒は寂寞に伏す。
13. 女と女 【65文字】
出立のとき、旅先で知り合った娘が物陰で泣いているのを見た。
法師との別れ。
珊瑚はそっと眼を逸らす。
あれは自分だったかもしれないから。
14. 手紙 【64文字】
これを珊瑚に渡してくれと、楓から文を預かった。
村の青年からだという。
即座に中を読んだ弥勒は、そのまま文を破り捨てた。
恋文だった。
15. 信仰 【63文字】
旅の途中、道端に祠を見つけると、珊瑚はそっと手を合わせる。
霊験を願うは法師の生命。
叶えたい。
たとえ己の生命と引き換えにしても。
16. 遊び 【65文字】
追っても追っても追いつかない。
自分の尻尾にじゃれつく雲母。
くるくる廻る雲母を見ていた七宝が、
「よく目が回らんのう」
と、つぶやいた。
17. 初体験 【65文字】
「はい、七宝ちゃん」
かごめから渡されたそれは、色鮮やかで丸い。
細い棒を持って、恐る恐る舐めてみた。
「…甘い」
飴玉は優しい味がした。
18. 仕事 【64文字】
珊瑚が投げた飛来骨は、巨大なムカデを両断し、楕円を描いて彼女の手許に戻ってきた。
珊瑚はそれを鮮やかに受け取る。
ひと仕事、終わり。
19. 化粧 【65文字】
初めての紅をさした。
美しいと褒められて、頬にも朱がさす。
純白の衣裳に身を包み、かの人に嫁ぐこの日。
珊瑚はそっと己の唇に触れてみた。
20. 怒り 【65文字】
一行の最後尾にいた珊瑚に男が声をかけた。
弥勒は立ち止まって珊瑚を待つ。
道を訊かれたというが、
「それだけですか」
「なに怒ってんのさ」
21. 神秘 【65文字】
冬の午後。
緇衣についた雪の結晶に気づき、弥勒は幼い娘たちに見せた。
自然が作り出す神秘だ。
そして、歓声を上げる二人の我が子の存在も。
22. 噂 【64文字】
腕のいい妖怪退治屋がいると聞き、近隣の村からの依頼は後を絶たない。
けれど法外な値を聞くと、「話が違う」と帰っていく者もまた多い。
23. 彼と彼女 【64字】
「どっちだと思う?」
「珊瑚が知っておるじゃろ」
「腹側を見れば判るんじゃねえか?」
三対の好奇の視線に危機感を覚え、雲母は逃げ出す。
24. 悲しみ 【65文字】
細い肩が震える様を見ていられなくて、弥勒は珊瑚を抱き寄せる。
彼女は黙って涙を堪える。
無音の慟哭をこのまま喰らいつくしてしまえたら。
25. 生 【65文字】
死に繋がる風穴が消えた右手をじっと見つめる。
未だ違和感があるが、最愛の娘と生きることを許された証だ。
弥勒はその手を珊瑚に伸ばした。
26. 死 【65文字】
いくつもの死をこの手で生み出した。
「琥珀、どうした?」
「ううん、何でも…」
生きると、父や仲間たちの墓前に誓う。
償いをするためにも。
27. 芝居 【65文字】
「犬夜叉の馬鹿っ」
涙を散らし、走り去るかごめ。
「早く追いかけるんじゃ!」
慌てて後を追う半妖。
「かごめさま、楽しんでますな」
「だね」
28. 体 【65文字】
仇を討つ。
そのため、珊瑚は我が身に四魂のかけらを使った。けれど、
「畜生…」
奈落に騙され、動かなくなった体の、何と無力なことだろう。
29. 感謝 【65文字】
一行から少し遅れて歩く犬夜叉の隣に珊瑚が並んだ。
「ありがとね」
「何だよ、急に」
怪訝な彼。
「ううん」
琥珀を殺すなと言ってくれたから。
30. イベント 【65文字】
愛でるだけという約束で、市で買った鬼灯はまるで雲母の瞳。
帰り道、手にしたそれを大事そうに見遣る珊瑚に、弥勒は困ったように微笑した。
*鬼灯の実や根には毒性があり、農繁期の妊娠を避けるため、避妊用に用いられていたということです。
現在の鬼灯市や朝顔市はそういった習慣がルーツだそうです。
31. やわらかさ 【65文字】
「珊瑚は物事をもっと柔軟に考えたほうがよい」
「そうかもしれない…って、どこ触ってる!」
「ここはとても柔らかいんですがねえ」
ばちん!
32. 痛み 【63文字】
「珊瑚!」
「大丈夫」
こんな怪我は日常茶飯事。
傷の痛みにだって慣れている。
けれど、
「痛むか…?」
胸が痛い。
あなたを想う心が痛い。
33. 好き 【64文字】
眼が覚める。
すると隣にあなたの顔がある。
「おはよう、珊瑚」
「おはよう、法師さま」
そんな当たり前の言葉を交わす、いつもの朝が好き。
34. 今昔(いまむかし) 【65文字】
生まれ育った里は、見るも無惨に破壊されつくしていた。
(必ず仇を討って、ここに戻る)
決意を胸に、珊瑚は思い出の残る場所をあとにした。
35. 渇き 【65文字】
潤うことなどないと思っていた孤独。
仲間を得て、少しずつ心は満たされた。
そして珊瑚と出逢った。
弥勒は、再び生じるこの渇きを持て余す。
36. 浪漫 【65文字】
新しく仲間に加わった退治屋の娘をからかうことがいつしか法師の日課になった。
気を惹くそぶりをしてはぶたれ、赫い顔で睨まれ―
…可愛い。
37. 季節 【65文字】
突如、吹き上げた風に髪を攫われた。
空を仰いだ珊瑚の頬を掠める風は、季節が変わったことを告げていた。
はためく洗濯物はまだ単だけれど。
38. 別れ 【65文字】
別れは突然やってきた。
だが、五十年前のそれとは違う。
心まで途切れたわけではない。
「…」
混乱を振り払い、犬夜叉は無言で井戸を離れた。
39. 欲 【65文字】
おまえに触れたい。
欲はとどまることを知らず、自らを蝕んでいく。
珊瑚を腕の中に閉じ込め、その唇を弥勒は貪る。
彼女の制止を待ちながら。
40. 贈り物 【63文字】
あの娘に似ていると思い、誘われるように道端の花を摘んだ。
白くて可憐で小さくて。
ふっと笑みを洩らした弥勒は、愛しい娘の姿を捜す。
2009.2.28.〜8.11.